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大きくそびえる巨大な雪だるま。  隠し扉から中に入ると、暖かなコタツと共に柔らかな笑みを浮かべた雪女が出迎えてくれた。
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次期以降のキャラクターブログに、こっそりとリンクを張っておきます。


◆偽島テスト・本編
【雪女】  ←イマココ


◆偽島R
【スライム】


◆六命
 
セルフォリーフ
【フェアリー】

・アンジニティ
【????】
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という訳で、新規登録宣言をしちゃいました。 ミ☆

たぶんまともに交流できないと思うので、以前も言ったかも知れませんが、今期は覆面プレイで行く予定です。
調べれば案外簡単に判ると思いますが、そんな奇特な人もそうそういないでしょうし。

同じ世界で、がんばりましょう。
それでは、また~。
・・・やっと、書き終わりました。
色々あったせいか、無駄に変な感情がこもってたり、〆が変だったりと至らない点はたっくさんありますが、これで終わりです。
こんなゆっくりでも、ちょこちょことここを覗いてくれていた方、ありがとうございました。


新しい島が、もうすぐ始まりますね。
そこで“彼”が目覚めるかどうかは判りませんが、その時はよろしくお願いします。

「こ、コイツは一体・・・」

「小さきモノよ、お主はこの島の生まれなのにソレを知らぬのか? ソレは“終末”じゃよ」

不自然な情景に本能が警告を鳴らす。体中の毛が逆立ち身構える小動物に、魔王は涼しい顔のまま事も無げに言った。

「“終末”って何だよっ!」

「おお、そうか。お主は確か、『二つ前のこの島』で生まれたと言っておったのぅ」

魔王はその問いに答えず、自分の内で確認するように言葉を続ける。

「二つ前は通称『島』と呼ばれており、【主】が無数の星を従えた〝災厄〟に対抗する為に創り上げた天からの受け皿。
 一つ前は通称『学園』と呼ばれており、・・・まあ、【主】が気紛れで創ったが半期程度で終わりを告げた学び舎じゃ。
 そして今は通称『偽島』と呼ばれる、『島』であって『島』では無い場所に成っておる。
 それぞれは同じ場所でありながら、まったく違った姿形を晒しており、それはもう別の世界と言っても過言ではなかろう。
 さて、小さきモノよ。お主はそれらの変改期・・・切り替わりの瞬間は何をしておった?」

「何をって・・・、何か知らねぇが無性に眠くなった時があってよ、どの位寝てたか判らねぇが、目ぇ覚めたら何もかも変わっていたって感じだったかな。
 ・・・いま考えてみりゃ不思議な話だが、それを特に変だと思わなかったな。『こういうものだ』みたいに、オレッちたちは捉えてたっけ」

小動物に言葉に納得したように頷く。

「やはりな、お主の場合は今までに二度の切り替わりを体験した。
 しかし、それらの時はどちらも終わりの時期が定まっていたから、緩やかな強制力のある眠りに就かされていたのだろう」

恐らく、島に住する他の生き物たちもな、と魔王は付け足す。

「はぁ? 確かにオレッちのダチや家族もみんな眠りこんでいて、切り替わりの時に起きてたヤツは居なかったらしいけどよ・・・誰が、何でそんなことを――」

「それは【主】が、お主たちの基本情報を転送作業によって破壊せぬよう安全の為に凍結圧縮したからじゃよ」

「・・・え~と、何を言っているのかさっぱり判らねぇが、もしそれをしてなかったら、オレッちたちはどうなっていたんでぃ?」

「そうじゃな。よくて情報の一部破損による人格の欠如。最悪、完全消去といったところかのぅ」

「ええいっ、さっきから何の専門用語だか知らねぇが、もっと判り易くはっきり言いやがれっ!!」

魔王の回りくどい言葉に、短慮な小動物は声を荒らげた。

「お? おお、すまんのぅ。言われてみればこの用語は、この地では馴染みが薄いやかも知れんな。
 要するにじゃ、消え去るんじゃよ。何も残さずに、綺麗さっぱりとな」

「んなっ・・・!?」

エリエスヴィエラはどこか諦観した笑みを浮かべる。

「詮ずる所、お主もワシも【主】の気紛れ、ポンッと鍵(けん)を押されたら跡形も残らぬような、儚い存在だしのぅ・・・。
 それはさておき、凍結圧縮――眠りに就かされていない今の状態であの“終末”に呑み込まれれば、消滅――ワシらにとっては死と同義じゃがの――する、それだけのことじゃ」

「それだけのことって、オマエなっ! オレッちはヤだぞ、そんなのっ!!」

「ほほぅ、何故じゃ? これはこの島の生き物として存在している以上、逃れえぬ定めじゃぞ?」

エリエスヴィエラのどこか試すような目の色に気付かず、小動物は叫ぶ。

「何故ってなぁ、どこのどいつが望んで消えたがるかって~のっ!
 そりゃ、生きててイヤになることなんてザラにあるさ、でも――それが生きてるってことだろ。
 それによ・・・」

「それに、なんじゃ?」

「・・・それにな、オレッちはアイツと『約束』したんだ」

真っ直ぐな、くりくりとした黒い瞳が魔王に向けられる。

「この場所で、必ず待ってるってな」

小さな身体に揺るがぬ強い意志を秘めて、

「定めなんて知ったことか、そんなの最後の最後まで抗ってやるさっ!」

闇はすでに天井を侵食し、四方から迫り来るというのに、小動物は一片の恐れも見せずに言い切る。

エリエスヴィエラは一瞬キョトンとし、次に声を上げて笑い出した。

「くくくっ、やはり閉幕まで結末は判らぬものじゃのぅ。
 小さきモノよ、御ひねり代わりにカーテン・コールの機会を授けてやろう」

エリエスヴィエラがパチンッと指を鳴らすと、瞬時に小動物の体がシャボン玉のような透明の球体に包まれてふわりと宙に浮かび上がる。

とっさに小動物は手を伸ばすが、薄い膜に触れても先程の魔方陣の結界と同じように、よく判らない感触が伝わってくるだけで、凹みも割れもしなかった。

「これこれ、そう慌てるでない。それも一種の結界じゃ。その中に居れば、この“終末”も乗り越えて次の『島』でもお主として在ることが出来るじゃろうて」

その時、空間をも闇に染めた“終末”が魔王の足元まで辿り着いた。

そしてそのまま、闇は魔王のことも呑み込んでいく。

「ちょ、魔王! 何でオマエも呑まれてんだよっ! どうしてオレッちにしてるような結界を自分にやらねぇんだ!!」

痛みは無いのか、足から膝へと徐々に呑まれているのに、魔王は小動物に冷ややかに微笑む。

「ワシはいいのじゃ、お主とは違うからのぅ」

「どういうことだよっ、何が違うってんだ!」

「小さきモノよ、お主には『約束』がある」

その言葉にピタッと小動物の剣幕が止む。

「お主は恐らく、この島の生き物の中で唯一『約束』をしている存在じゃろう。
 だからこれはワシからのサービスじゃ。
 また、彼奴と会うんじゃろ?」

エリエスヴィエラはいつもの氷のように冷たい笑みとは違う、柔和な笑顔を小動物に向ける。

意外な魔王の様子に声を呑む小動物に、からかうように魔王は笑いかけた。

「ほれほれ、まさか『ワシがお主らの友情に心打たれて、自分の身を犠牲にしてお主を助けた』などと思うではないぞ?
 ワシとて七柱神の一つ、その気になれば自身を含めた島の全生物を救うなど容易いものじゃ。
 まあそれはさておき。ただな、観てみたいのよ」

魔王の豊かな胸が闇に呑まれていく。

「一人と一匹の約束が果たされる物語りのフィナーレを、な」

「魔王・・・」

「だがこれしか方法が無いと言っても、彼奴――或いは彼奴に近き者がこの『島』に訪れないのならば、お主は永劫に目覚めず眠り続けることになるじゃろう。それでもよいかのぅ?」

もはや首から上を残すだけの魔王に、小動物は大きく頷く。

「ありがとな、魔王」

「くくっ、まともに感謝されるのは久しぶりじゃが、悪いものでは無いのぅ。では暫し眠るがよい、さらばじゃ」

次の瞬間、小動物の意識は途切れ、夢も見ないほど深い眠りの中に沈んでいった。

 

 

 

 

 

 


「・・・さて、これで全て終わりだのぅ」

すでに頭上から目元辺りまで闇に融け、鼻先から顎だけを残すのみ。

小動物を内に含んだ結界も闇に沈んだが、余程のことがない限り彼奴が消えることはないだろう。

「フィナーレを観てみたいとは言ったが、彼奴等が出遇う時にワシがワシで在れるかは判らぬがな。
 こればかりは、『【主】のみぞ知る』だからのぅ。
 ・・・まあ、それを夢想するのも一興というものよ」

にやりとした赤い唇が闇に包まれた後には、何一つその世界に残るものは無かった。

 

 

 

    雪の精と小動物の物語りは、ここで一旦幕を閉じる。

    彼らが再び出遇い、新たな物語りが紡がれていくのか。

    それはまた、別のお話し。



                      ――終雪――

あと一月くらいですねぇ・・・。
そ、それまでには残りを何とか・・・。(途中まで書いたのが消えた orz)

残り一回です。

「銀雪を纏しモノよ、お主に餞別じゃ」

魔王のその言葉に合わせて、なふゆの目の前に一枚の紙片が現れる。

とっさに受け止めたなふゆは、それを見て驚きの声を漏らした。

「これって・・・わたしと、りっちゃん?」

「うむ、それは以前この島を訪れた者が置いていった撮影機で写し出した、写真という物じゃ」

「写真・・・。まるで氷面鏡(ひもかがみ)に映ったのを、そのまま凍結したみたい・・・」

「それは島外の技術によって作られた物。よって、この島のルールに関与すること無く持ち出すことが出来るはずじゃ」

「っ! ・・・ありがとう、エリエスヴィエラさん・・・」


なふゆは大切に懐に仕舞い、目を閉じ、着物の上からそっと手を当てる。

大事な宝物が、この手の中から抜け出さないように。

小動物はエリエスヴィエラの言葉に怪訝な表情になる。

「てかよ、その写真はいつ撮ったんだよ。そんなん撮られた覚えは無いんだが」

「お主たちが気付かぬ間に撮るなど造作も無いことじゃ。主らは揃いも揃ってポケポケしとるからのぅ」

「む、それには異議を唱えさせてもらうぜぃ。さすがにそこばっかりは同意しかねるな」

「そうそう、りっちゃんもわたしも、ポケポケなんかしてないんだから~」

「・・・なふゆ。天然ってのはな、自分では気付いて無いから天然って言うらしいぜぃ」

「え? どういうこと?」


魔王は二人のやり取りを微笑みながら見ていたが、ふと笑みを消す。

「さあ、間も無く時間じゃ」

その声に合わせて魔方陣の雰囲気が変化した。

先程までの待機状態から、今すぐにでも移送の儀式が発動するかのように、空気が張り詰めていく。

「たった今、術式を起動させた。これ以上時を置いて月の位置がずれると、うまく発動するか判らなくなるでのぅ」

スッと虚空から砂時計を取り出し、それを小動物の隣に据える。

無機質な白い砂が、∞を縦にしたような容器の中をサラサラと滑り落ちていく。

「あと五分少々、砂が落ちきった時が実行時間じゃ。・・・ワシは席を外そうかのぅ、最後の時間は二人で迎えるのが良かろうて」

言うや否やエリエスヴィエラの姿は霞のように消え去り、その場には、なふゆとりっちゃんだけが残される。


予想外の魔王の配慮に二人は呆気にとられた感じだったが、どちらからともなく苦笑が浮かんだ。

「ははっ、あんなこと言ったってよ、結局はどこかで『観』たり『聴』いたりしてんだろうけどな」

「あ~、そうかも知れない。だってエリエスヴィエラさんだし、ね。・・・それにしても、最後だなんて。わたし、またこの場所へ皆に会いに来るのにね」

「ああ、そうだな・・・」


笑いが止まったあと、空白の時間が生まれる。

伝えたい思いは沢山あるのに、言葉にならなかった。そもそもこのわずかな時間では、これまで二人で積み重ねてきた想いの全てを出し切るなんて無理だった。

そんな時が止まったかのような中でも、砂時計は同じ速さで時を刻んでいる。

砂が落ちるにつれ、何かに締め付けられるようになふゆの胸が苦しくなっていく。

そして、言葉が吐息に混じって漏れた。

 

「――しいよ・・・」

「ん?」

「・・・わたし、さびしいよ・・・。りっちゃんが居ないと、さびしいよ・・・」

その白い頬を一筋の涙が流れる。

押し出された想いと共に、なふゆの目から止め処無く涙が溢れていた。

それでいて、なふゆは笑顔だった。

心配をかけてはいけないという思いで、必死に作ったぎこちない笑顔を浮かべながら、なふゆは大粒の涙を静かに流していた。

「なふゆ・・・」

「・・・ごめんね・・・」

なふゆは涙もそのままに、もう一度「ごめんね」と小さく言った。

それは願っても決して叶わぬことを願い続けていることに対しての侘びの言葉。

でも、それでも言わずにはおれなかった。

張り裂けそうな気持ちを抱えたまま、笑顔で“さよなら”と言うことなんて、なふゆには出来なかった。

 

バ~カ、謝ってんじゃねぇよ。

茶化すように笑いながらそう言って、涙を拭ってやりたかった。

でも無意識に伸ばしかけた小さな手は、薄紙ほどの厚さの結界に阻まれて空を切るだけで、触れることも叶わない。

届くのは言葉だけ。

「・・・来いよ」

ならばこの思いを、言葉に乗せて伝えよう。

「また来いよ! きっと来いよ! 必ず来いよっ!!」

大切なコイツに。

「オレッちは待ってる! ずっとずっと待っているからよっ!!」

この場所で会うためにな。

 

不器用な言葉と共に染み渡る、暖かな小動物の気持ち。

「うん、わたし必ず戻ってくるよっ!」

この身さえも溶けてしまいそうな、その思いに応じて。

「この場所にっ! みんなに会いにっ!!」

大好きな貴方に。

「りっちゃんに会いに、帰ってくるからっ!!」

また会いたいから。


「だから・・・」

ゴシゴシと袖で顔をこすって、それでも潤んだ瞳で小動物を見つめ、

「またね。・・・りっちゃん」

別れを涙ではなく、最高の笑顔で締めくくる。

「ああ、またな。なふゆ」

その時砂が落ちきり、大好きなその笑顔を目に焼き付けるかのように、全てが光に包まれた。

 

 

 

やがて光が収まったその場には、小動物だけが残されていた。

魔方陣の中には誰も居らず、円の中を名残を惜しむように光の粒子が漂っていたが、それも瞬く間に消えて失せていった。

今は初めに見た時と同じように、線に沿ってうっすらと光を放つのみ。

「・・・・・・ふぅ」

「行ってしまったのぅ」

長い沈黙の後、小動物が深いため息をつくと、それを合図にしたようなタイミングで間近に黒い影が姿を現した。

「やけに早い登場だな。もうちょい余韻を持たせてくれたって、バチは当たらねぇぜぃ」

「生きるということは、出会いと別れの連続で成り立っておる。離愁に浸るなとは言わんが、それら一つひとつに満遍なく時を取れるほどの猶予が必ずしもあるとは限らん」

「・・・何かあるのか?」

意味ありげな魔王の言葉の響きに、肩越しにおどけた口調で茶化した小動物も振り返る。

「正直、間に合ったと言って良いのか微妙なところなんじゃが、銀雪を纏いしモノを送り出せたのだから一応間に合ったと考えるべきかのぅ」

「いったい何が・・・これはっ!?」

ふと周りの様子を伺った小動物の耳に、固いものが軋み歪むような異様な音が聞こえてきた。

音のする、小動物たちが降りてきた階段の方角を見ると、すでにそこに階段は無く――真っ黒な闇が拡がっていた。

闇と石畳の交差している所に目をやると、まるで透明なヤスリで削っているかのようにゆっくりと石の部分が消滅し闇に染まっていく。

そしてそれは、確実に小動物たちに迫っていた。

サボってましたすみません。 (_ _ ;)
文章自体は前回の時点で書きあがってたんですけどね・・・。

たぶん残り一回です。

「・・・すまねぇ、なふゆ。オレッちが行けるのは、ここまでだ」


出会いは偶然に、別れは突然に。

「りっちゃん、何を・・・言ってるの?」

それは天使の導きか、悪魔の所業か。

「なふゆ。ここで、お別れだ」

それは、誰にも判らない。

 

 

 

「――そ、それって――」

魔方陣の上を駆け抜け、なふゆは小動物の元へ近付こうとする。

しかし魔方陣の外に出ようとしても、その境界の空間には硬いのか軟らかいのかすら判らない透明な壁のような物があり、それ以上先に進むことが出来なかった。

「悪いが結界を張らせてもらった。いま陣の中からお主に出られると、儀式が失敗する・・・やり直す時間も無いしのぅ」

呆然とするなふゆに、エリエスヴィエラは無表情に告げた。

「りっちゃん、どうしてっ! 何でお別れなんて言うのっ!」

なふゆは耳を疑い、困惑と動揺の色を滲ませ、小動物に問い訊ねる。

だが小動物は強く唇をかみ締めたまま黙っている。

その時、代わりに魔王が口を開いた。

「銀雪を纏いしモノよ、この島のルールを覚えておるか?」

「・・・ルール?」

「お主は空から降ってくるという、イレギュラーな方法でこの島に訪れた。
 だから所持してはおらぬだろうが、これを目にしたことはあるはずじゃ」

エリエスヴィエラが右手を広げると、瞬時に一枚の白い紙片が現われて、その手に収まる。

そして、忌々しい物でもあるかのように文面をなふゆの方に向け、淡々と紙面に書かれた文字を読み上げた。

 

”これは日々退屈を感じている諸君への招待状。それは不思議な島の遺跡。島を出れば遺跡で手にした財宝は消える、しかし七つの宝玉があれば消えない、宝玉は遺跡の中。島はエルタの地より真南の方向、素直に信じる者だけが手にできる財宝―――胡散臭いですかなっ?ククッ・・・疑えば出遅れますよ、パーティーはもう始まっているのです。”

 

「見覚えはあろう。ありとあらゆる世界に向けて〝ある男〟が送った、この島への招待状じゃ」

〝ある男〟の部分を強調して言い捨てると、招待状をかき消す。

「それだったら、以前ピンクの丸っこい人に見せてもらったことがある・・・でも、それが何だっていうのっ」

なふゆの語気荒い言葉を、エリエスヴィエラは感情の見えぬ真っ直ぐな視線で受け止める。

「ワシはお主のことを、それほど愚かだとは思っておらぬ。――まだ気付かぬか?」

「分からないよっ。だって、わたしはこの場所からは財宝どころか、何一つ持って行こうとは――」

ふとその時、なふゆの中で何かが引っかかった。


    島を出れば――手にした――消える、――七つの宝玉が――消えない


ドクンと一際、心臓が高鳴った気がした。

寒さをほとんど感じないはずの体に、震えが走る。

「・・・え? 島を出れば、消えるって・・・まさか、そんな・・・」

そんな雪女の様子を見て、魔王は先程、「もう二度と、この島に来ることは無い」と言い切る直前の逡巡のときに見せた、同情的な表情になる。

見るに忍びないという風に、瞬きひとつ分の間だけ目を伏せた。

程度は違うだろうが、死刑宣告を言い渡す者は、きっとこんな表情になるのだろう。

「そう、何もそのままで持ち出せぬのは、財宝に限った話では無い。それはこの島で生み出された物、全てに及ぶのじゃ。
 もちろん・・・この島で生まれた、そこの小さきモノも、な」

雪の精霊は愕然としたまま、助けを求めるように小動物に視線を落とす。

小動物は耐えるように固く目を閉じている。

「この島はな、誰かの見ている夢のような場所じゃ」

エリエスヴィエラは静かな声で語りだす。

「他の世界では考えられぬほど日毎に律が変化し、時には今日という日までもが気付かぬうちに何度もやり直されたりする。ここでは死という事象すらも、実際的には消滅に繋がらん。例え外から訪れた者が命尽きようとも、夢から覚めるように元の世界に戻るだけ。
 まあ、思う込みの強い者だと、自らに『自分は死んだ』という暗示をかけてしまい、二度と目を覚まさぬということもあるようじゃが」

さすがにそこまでは面倒見きれんしのぅ。とエリエスヴィエラは零した。

「このように定まりの無い夢みたいな世界では、生まれる産物も幻のみたいな物じゃ。
 もちろん、それは如何なワシですら例外ではない。いわんや、小さきモノでは、じゃ」

ははっ、と小動物から小さな笑い声が漏れ、顔が上がる。

「よりにもよって自分自身のことを失念するなんて、間抜けにも程があるよな。
 ・・・いや、もしかしたら本当は考えたくなかったのかも知れねぇな。オレッちもずっと一緒になふゆと旅をして行きたいなって、夢を見ていたからな・・・」

「・・・りっちゃん・・・」

なふゆはわずかに俯き、それに合わせて銀色に輝く前髪がシャラリと流れて目元を隠す。

「ダメだよ・・・」

長い髪の隙間から垣間見える口が震え、ポツリと押し殺した声が漏れる。

「ダメだよ・・・わたし、一人じゃ歩いていけないよ・・・」

なふゆは陣の中にのみ振り注いでいる雪のような粒子を掻き分け、勢いよく顔を上げる。

その赤い瞳は、深い悲しみとやるせなさに揺れていた。

「りっちゃんと一緒じゃないなら、わたしは記憶なんて戻らなくてもいい。りっちゃんと別れるくらいなら、昔の記憶なんて要らないっ!」

むずがる子供のようになふゆは叫び、いやいやと大きく首を左右に振る。

納得出来ない訳ではないが、したくなかった。

認めてしまったら、それは決別を意味することになるから。

思いの箍が外れてしまったかのように、言葉が止まらなかった。

「りっちゃんと別れることになるのなら・・・・・・わたしは、行くのを止め――!」

「なふゆっ!!」

「!!」

りっちゃんの制止の声に、なふゆの体がびくりと竦む。

「それ以上、言うな。オマエは、言っちゃいけねぇんだ・・・。
 オマエは、今、記憶を無くしているが、それは消えてなくなった訳じゃねぇ、思い出せねぇだけだ。
 そしてなふゆ、オマエが憶えていなくても、オマエのことを憶えているヤツはいる、想ってくれるヤツはいるんだ。
 ・・・魔王が言った通り、ここは夢の中と同じような場所だ。いつまでも夢を見ていちゃいけねぇ、夢を引きずっていちゃいけねぇんだ。
 今が目を覚ます時だぜぃ、なふゆ」

「りっちゃん・・・」

小動物の慈愛に満ちた眼差しに、雪精は辛そうにくしゃりと顔を歪ませる。

なふゆは自分が我侭を言っていることを十分に理解していた。そして、小動物の本当の思いさえも確かに感じていた。

痛いほど判るだけに、なふゆにはこれ以上、我を通すことは出来なかった。

» プロフィール
HN:
なふゆ

自己紹介:
ENo.107の背後のヒト。
自キャラに耐寒能力を奪われてしまったので、極端に寒さに弱い。
代わりに睡眠時間が同期し始め、徐々に増えている所に危機感を感じているらしい。
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